お子様の英国留学をお考えの保護者様へ
お子様の英国留学を考えている保護者の集いにお招きいただいて、私の娘の留学前・留学中のことなど、ご質問にお答えするかたちでさまざまお話しました。
なぜ私の娘は高校から単身留学を決めたのか(中学を卒業し15歳でロンドンへ渡り半年間語学学校へ通った後、現地の私立高校へ進学)、なぜロンドンを選んだのか、なぜ一人で行かせたのか、学校の寮生活はどんなようすか……ご質問いただいて初めて思い出すこともあり、懐かしい気持ちでいっぱいになった幸せな時間でした。ーーとはいえ、私の場合すでに娘は留学(高校+大学=9年間)を終えて帰国し、日本企業に就職し社会人となっているために「懐かしい」と呑気なことを思いますが、留学中はさまざま心配もありました。保護者様方は今まさにその不安の中にいらしゃるわけです。
一番心配だったのは「医療」です。
医療施設・技術とも発達充実しており、国民皆保険で、ときには戸籍を持たない外国人の治療まで行ってくれる国は日本しかないのではないかと思います。困っている人があると手を差し伸べる美しい文化です。
が、英国はじめ諸外国ではそうはいきません。
留学生には、学校の保健室もありますが投薬のみで治療は行いませんため、病院へ行かなければならないわけですが、、、
娘が高校生のとき、「風邪をひいて熱が38度でた」と保健室の先生に伝えると、38度は発熱のうちに入らない(英国人は日本人より平熱が高い)と言われたこともあり、風邪ひきで病院診療を受けようと思うと、ほぼ1ヶ月待ち。(高額な保険に入っている英国人は即治療を受けられます)
もしも盲腸になって、感じる「痛み」を英語でちゃんと伝えられるのか心配でした。盲腸にかぎらず本人が体の不調や痛みを伝えるのは日本語同士でも分かりづらいところがありますから、それを英語で行って大丈夫なんだろうかとハラハラしました。(が、幸いなことに娘は「花粉症」以外でロンドンの病院で診察を受けることはありませんでした。花粉症の治療も荒っぽくて酷いものだったようですが、、、
日常的に心配だったのは歯科です。
歯科治療は、どのように想像しても日本の歯科医が世界一ではないかと思われます。ロンドンで虫歯治療を行うことに大きな不安を覚えていたため、とった対策は「虫歯を作らない」ことと「帰国の度に歯科医でデンタルケア」でした。そのおかげで、娘は25歳の今も虫歯がほとんどありません。
ーーー保護者の皆さまは、イギリスで行う勉強に不安があるとおっしゃいます。
日本とカリキュラムが違うけど、大丈夫でしょうか、と。
それはぜんぜん大丈夫です。日本とは異なり、高校生で経済学の授業があったり、軍隊教育では軍事教練を行ったりもしますが、その環境に置かれれば馴染むものですし、親は子どもの順応性を信じてやることしかできません。勉強するのは子ども本人です。
娘が高校生のときとっていた授業のノートを持参しましたが、日本の高校のノートとのボリュームの違いに皆さま驚かれていました。私も当時娘から見せてもらったときは驚きました。そのまま一冊の書籍になるのではないかと思えるほどの書き込みです。
ーーー積極的に英国留学を考えている保護者様たちですので、お子様の英会話力もとても高く、今までに海外旅行も何度も行っていらっしゃるとのこと。
では、大丈夫ではないでしょうか。私の娘は、中学1年生のとき初めてロンドンへ連れて行きました。小学生のうちは一度も海外旅行をしたことがありません(私の仕事が忙しすぎたことと経済的に困難だった理由と、加えて「日本人としてのアイデンティティが育った後で外国を見せて、カルチャーショックを受けさせたい」と、娘を産んだときから思っていたためです。
中学1年のとき1週間家族3人でロンドン旅行をし、中学2年の夏には娘一人で4週間ロンドンのサマースクールへ行きました。当時英検準2級でしたが、サマースクールはアクティビティのほうが多かったため?語学力の低さはあまり問題ではなかったようです。
ーーー「うちの娘も英検準2級ですが、大丈夫でしょうか」と、すごく不安気そうに尋ねられた保護者様がありました。
大丈夫だと思いますが(私が留学したのではなくて娘のことだから「〜と思います」としかお伝えできないのが歯がゆい思い)、もしご不安でしたら、留学前にサマースクールへ行かれてもいいし(今年のスクールにはもう間に合わないため)、福島県にある「ブリティッシュヒルズ」へ旅行してもいいのではとお勧めしました。
10年以上前、福島で講演を行ったとき私の宿泊先はブリティッシュヒルズでしたが、スタッフは英語で話してくれるし、ゲストハウスも食事も英国式のため、英国体験ができます。
そういえば娘は、17歳のとき『留学生日記 イギリス式高校生活』を出版しています。(現在は絶版、Amazon中古出品あり)
留学を決めたけど当時はアメリカ留学ほど情報がなく、寮生活や学校が休みの過ごし方など分からなくて不安だった娘が、「これから留学する子どもたちに向けて書いておかなきゃいけないの。書店でイギリス留学の本を探しても少ないし、専門的すぎて分かりにくいから、ふだんの生活を知っておくと安心して留学できるでしょう」と書いたものです。
上記の本にメッセージを寄せてくださった蟹瀬誠一氏の言葉をご紹介します。
「私の娘レナも15歳のときに英国へ留学しました。留学中に彼女はふたつのものを手に入れました。ひとつは自立心、もうひとつは他人に対する思いやりです。莉佳子さんもきっと同じでしょう。
伝統と自由が共存している英国では、何よりも自分の考えをしっかり持つことを重視します。また多種多様な人種、宗教、文化が混在しているため、他人の価値観をきちんと評価することも学べます。レナは辛くて何度も涙を流したようですが、多感な高校生時代をそんな環境で過ごせたことはとても貴重な体験でした。」
私も、これから留学なさるお子様をお持ちの保護者様へ、蟹瀬氏とまったく同じ言葉を贈らせていただきます。
お話させていただいた保護者様のご子息ご息女が、留学によってよい経験をなさることを心よりお祈りいたします。
ブリティッシュヒルズ サイト
http://www.british-hills.co.jp
『留学生日記 イギリス式高校生活』文藝春秋社刊
池内莉佳子著(池内莉佳子はペンネームです。将来どんな職業に就くか分からない学生のうちに出版するリスクを考えペンネームとしたものです。あ、「池内ひろ美」もペンネーム。仕事をするために付けた名前で、仕事を辞めたら戸籍名を名乗ります)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784160080294
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