年上すぎる妻!?:フランス大統領
フランス大統領の妻が24歳年上であることは、ある種の華やいだ気持ちを呼んでいます。
どのように華やぐかといえば、中高年の女性たちが嬉し恥ずかしな感じになるわけですね。
結婚している女性たちは
「私もすごく年下の男性との恋があるかもしれませんよね。彼と再婚なんてことになったら子供たちになんて説明したらいいかしら」
妙齢を超え中高年となった独身女性たちは、婚活の方向を変えるかもしれません。
「同世代か4歳上までの男性と結婚しようと思っていたけど、年下、それもぐっと年下の男性も結婚対象として考えてもいいかもね」
そもそも、今やフランス大統領となった彼は25歳年上の女性にプロポーズを繰り返した純愛のように語られていますが、彼らの出会いは彼が15歳高校生のとき彼女は40歳の女性教諭でした。
二人の交際は彼の両親からの強烈な反対があり(当然ですが)転校させられ、その後も彼は彼女とのつきあいをやめなかったばかりか10年以上もプロポーズし続けたとロマンティックに語られていますがーーー「彼が」プロポーズし続けた、と語られることに私は少し違和感を覚えます。
年上すぎる女性と年下の男性の関係を男性主体の視点で語ることへの違和感です。
年齢が二回りも下の異性を意のままにしたり良い関係を継続できるのは、男性が年上であるより女性が年上である場合のほうがたやすいものです。
大きな年の差がある場合、女性が年上だとさまざま心配りをし彼にとって可愛らしくあるために不断の努力を続けます。また、年下の彼を愛し続ける努力もします。
逆に、男性が二回りも年上のカップルでは芸能人の例を引くまでもなく、若い妻の側が浮気や浪費を繰り返し夫を振り回し、年上の夫は(妻の年齢が若いというだけで)さまざま忍耐を強いられている感が否めません。
仮にまだ十代の彼が一方的に恋慕したとしても、当時教職にあった彼女が彼を遠ざけるのがいわゆる「常識」ではないでしょうか。彼の将来を考えて身を引くという美しさは日本的なものであってフランスでは通用しないのかもしれませんが。
いえ、日本でも既婚女性が年下の独身男性と恋をすることがないかといえば、もちろんあります。
有名なところでは、当時アメリカ留学中だった鳩山由紀夫氏が既婚者だった幸夫人と恋をして、幸夫人は手紙を残して当時の夫のもとから姿を消し、その後鳩山夫人となっています。ところが日本では、この夫婦について美しい物語とはされていません。
そもそも恋愛大国フランスにおいては、歴代大統領の浮気、愛人、隠し子を報道する記事が後をたちませんし、ミッテラン氏が、大統領就任直後の朝食会で、記者から女性問題について問われたとき「それが何か?」と軽く答えたのも有名です。これが日本であれば大変な騒ぎになったことでしょう。
いずれにしても、現大統領夫人は、彼がまだ十代のうちに将来大物になりそうな彼を見出し自分の虜にし続けたブリジッドです。世界中の女性の(なんとなくの)憧れが集まるのは当然のことかもしれません。これはなんとなくの憧れであって言葉にするのは少し気恥ずかしい憧れです。
この夫婦の関係性は彼を主体に語られるものではなく、彼女が主体のものと感じます。
彼らのつながりの根っこにあるのは、彼女のキュートさや、いつもルイ・ヴィトンを着ているお洒落さや、64歳でもミニドレスを着ることのできる美脚の持ち主である彼女の魅力などではなく、彼女が彼を育ててきた強さではないでしょうか。彼女が彼を育てることができたのは、彼から彼女への「尊敬」があったからではないかと思います。
私は今までにご相談のなかで多くの年の差カップル(女性が年上で男性が年下)を見てきました。
そこには、年上の妻の色気や美しさ、知性教養があったり、妻の莫大な財産や大きなエネルギーがあったりします。彼女らの自信あふれた感じや自由さ、奔放さ、ときには男性が好む類いのふしだらさもあります。
彼女らを形容するために使うことのできる多くの言葉がありますが、他者がどのような言葉で語ろうとも、彼の中には彼女に対する「尊敬」の気持ちがあり、また、心から彼女を「かわいい人」と思っている彼がいます。その気持ちを持つ彼は彼女から愛され、守られ続けています。
彼らの気持ちは、けっこう切ない。
それは、たとえば二回りも年下の女性と結婚する男性に対して、「オマエは若い嫁さんをもらっていいなあ」と鼻の下をのばすだけの男性たちには永久に理解できないものでもあります。
もっともっと、深いものがあるのよね。
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