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父子DNA型鑑定(産経新聞)

公開日: : ブログ, メディア, 恋愛と結婚と離婚

産経新聞(朝刊)紙面。
【金曜討論】
父子DNA型鑑定 
棚村政行氏「民法の早急な見直しを」 池内ひろ美氏「親子は情緒的つながり」

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140627/art14062710000001-n1.htm

(以下、上記の記事には反映されていません私の意見)
親子関係不存在の訴えが出生後1年以内にしか起すことができないままDNA鑑定を推すのではなく、DNA鑑定結果を裁判所が重視するのであれば民法の見直しが必要ですし(この類いのテーマでは弁護士先生と素人の私では見解が異なる場合が多いのですが、今回は似た方向の意見となりました)ーーーそもそも、「子供と自分(父親)のDNA鑑定をしよう」と思った時点から、その結果が白であれ黒であれ、それまでの親子関係・家族の状態より良くなることはないと知っておいてくださいね。

家族にとっては法的つながりも大切ですが、情緒的つながりがさらに大きくあると感じています。それは法的つながりがあったうえでのものと、日本が法治国家であるかぎり(私は)思います。残念ながらパックス法にも選択的夫婦別姓制度にも賛成いたしかねます。
自由度が高まるのは良いことと思われる方が多いようですが、選択肢が増えることによって負う自己責任の概念を理解なさる方はあまり多くないと感じています。

幼児への虐待事件等みていると、DNAより人としての成熟度が大切なのではないかーーもちろんDNA的つながり法的つながりが根底にある安心はありますが、大人が未成熟な子供を守り育てるという情緒的な意識を持たなければ、子供たちは養われなくなります。人間の子供を育てるのは、野生動物と違って15年も20年も時間がかかり根気の必要なものですし、人間が単なる「DNAの乗り物」ではないと感じる所以でもあります。

ーーーーーー(以下、記事全文)

父子DNA型鑑定 棚村政行氏「民法の早急な見直しを」 池内ひろ美氏「親子は情緒的つながり」

2014.6.27 10:00 (1/5ページ)
棚村政行・早大教授

棚村政行・早大教授

 親子関係を決めるのは、民法かDNAか-。DNA型鑑定で血縁関係がないことが明らかになった場合、法律上の父子関係を取り消せるかが争われた2訴訟の最高裁判決が、来月17日に下される。鑑定結果などを根拠に父子関係を取り消した1、2審判決は、最高裁で見直される可能性が高い。争点となるDNA型鑑定の位置づけについて、家族法に詳しい棚村政行・早稲田大法学学術院教授と、夫婦家族問題コンサルタントの池内ひろ美さんに意見を聞いた。(磨井慎吾)

棚村政行氏

--親子関係をめぐる訴訟で、DNA型鑑定が大きな問題になっている

「民法の制定時に想定されていなかった科学的血縁鑑定の技術が進み、遺伝的なつながりが正確に、しかも安価に分かる時代になったからだ。その結果、親子としての生活実態と血縁関係のずれが明らかになる場面が多くなっており、親子関係を法的にどのような要素で決めるかが問われてきている」

--DNA型鑑定で血縁関係がない場合の父子関係取り消しをめぐる2訴訟について、最高裁判決が来月に出る

「現行民法では、婚姻している夫婦に子供が生まれた場合、夫が子供の父とみなされる(嫡出推定)。夫が子供の出生を知ってから1年以内に嫡出否認の裁判を求めない限りこれは覆せないし、また一度自分の子と承認してしまえば争えなくなる。いずれにせよ、父子関係について子供や母親ではなく、夫が決定権を独占しているのが今の法の仕組みだ。婚姻関係に基づいて子供に早く父親を与えることを重視したこの仕組みか、DNA型鑑定による血縁を重視するかが問われたわけで、下級審では判断が割れた。おそらく最高裁は下級審判決を見直し、何らかの新たな判断基準を示すと思われる」

--なぜ最高裁の新判断が必要か

「現状を踏襲するだけでは、問題の解決は図れないからだ。個々の裁判所が事件ごとに個別で判断していくのは、もう限界だと思う。裁判所の判断が揺れているのは当たり前の話で、体に合わなくなった服をむりやり着せてほころびが出ているようなものだ。親子のあり方、婚姻のあり方がこれだけ多様化している現在、親子関係を確定する民法のルールを早急に見直すべきだ。その場合、血縁だけでなく生活実態や子の福祉などを総合的に判断する必要がある」

--DNA型鑑定には多くの業者が参入し、利用は急速に広がっている

「日本の遺伝子ビジネスは、規制がないまま利用が進んでいる。係争の中で裁判所から命じられて協力をするのならともかく、私的にDNA型鑑定を行っている現状は望ましくない。DNA型鑑定をどう利用するか、法的な枠組みをつくって、ルールの中に位置づけることが必要だろう」

--DNA型鑑定の利用は厳しく制限すべきか

「DNA型鑑定がなかった昔に戻れるわけではないし、存在を無視することは不可能だ。婚姻制度や法的親子関係の基礎に、血のつながりが置かれていることは間違いない。血縁と親子生活の実態がずれたとき、親子関係をどう定めるかある程度明確なガイドラインが必要だ。その中でDNA型鑑定は一つの要素として考慮せざるを得ないだろう」

池内ひろ美氏

--鑑定結果をもとに親子関係を取り消した下級審判決をどう思うか

「民法の日本的婚姻の考え方に反する。そもそも、現行民法では出生から1年以内でないと嫡出否認の訴えは起こせない。DNA型鑑定を推し進めるのであれば、まず民法を改正しなければならない。現状でDNA型鑑定の結果が独り歩きするのは危険だと思う。民法があって育ってきた、日本的家族の情緒を軽んじてほしくない」

--親子関係で、情緒はDNA型鑑定より上位に位置づけられるべきか

「日本の親子関係では、情緒的なつながりがとても大きい。家制度(強い権限を持つ戸主が『家』を統率する、戦前民法の家族制度)があったときは、家族にとって情緒的なつながりよりも家という枠組みの維持の方が重視されてきた。だが、家制度がなくなって約70年たった今は、情緒的なつながりの方が大切。これを失ってしまうと家族が崩壊してしまう。その観点から、私はDNA型鑑定にも選択的夫婦別姓にも反対している。いずれも、情緒的つながりを壊してしまうからだ」

--DNA型鑑定件数が増えている

「昔は数十万円かかっていた鑑定の費用が、最近は2万~3万円と廉価になったためだ。ただ、そうした鑑定が科学的に信頼できるのかという疑問は若干ある。件数が増えると、海外業者への委託による鑑定内容の誤訳や、試料の取り違えなどのミスも起こりやすくなるからだ。鑑定結果が誤っていたことが後で判明しても、一度でも疑いが生じてしまった関係は元に戻らない」

 --夫婦関係が継続している場合、DNA型鑑定を勧めていない立場だ

「鑑定の結果が白でも黒でも、家族関係がそれまでの状態より良くなることはない。たとえば、数は多くないが夫の知らないところで妻がレイプされて妊娠した例もある。そのことを夫に言えないでいたら、夫が浮気を疑ってDNA型鑑定を行った。その結果、浮気ではなくレイプだったことを妻が明かさざるを得なくなり、2人とも傷ついてしまった不幸なケースだ。鑑定を行うのは、婚外子について自分が父親ではないと逃げようとしている場合など、子供の権利や福祉を守る目的に限るべきだと思う。父親の権利を守る、もしくは剥奪するために行われるDNA型鑑定には反対する」

--鑑定を行う場合は、家族関係の崩壊を覚悟せよということか

「訴えを起こすまでは、鑑定を使わない方がいい。DNA型鑑定をすると、間違いなく家族関係は終わる。ちょっと試しに鑑定をやってみて、壊れてしまう夫婦というのは不幸だ。家族や夫婦の関係というものは、試してはいけない。鑑定は裁判を起こしてから、その中で行ってほしい」

              ◇【プロフィル】棚村政行

たなむら・まさゆき 昭和28年、新潟県生まれ。60歳。早稲田大法学部卒業、同大大学院法学研究科博士後期課程満期退学。青山学院大教授を経て現職。弁護士。著書に「子どもと法」「結婚の法律学」など。

【プロフィル】池内ひろ美

いけうち・ひろみ 昭和36年、岡山市生まれ。52歳。結婚、出産、離婚、子連れ再婚を経験。平成8年に「東京家族ラボ」を設立し、個人相談、心理カウンセリングなどを行う。著書に「結婚の学校」など。

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