映画『世界の果ての通学路』
お忙しい毎日とお察ししますが、お時間を作っていただき、ぜひご覧いただきたい映画。
お子様がある方は、ぜひお子様も一緒に観ていただきたい作品です。人が学ぶことの大切さ、学ぶための姿勢が10歳前後の男の子、女の子からがんがん伝わってきます。(5月29日まで上映)
映画『世界の果ての通学路』
http://www.sekai-tsugakuro.com/
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本作は、11歳の少年が両手で地面を円を描くように掘り、丁寧に掘り続け、わき出た水で洋服を洗うところから始まる。
洗濯物の入ったバケツを抱え草原を走って自宅へ戻り、洗った洋服を干す。そして、父母に向かって誇らしげに「制服を洗ったよ」と語る。
その夜、家族がひとつの大きな皿を前に食事をしながら、祖父が語る。
「通学途中にもしも象が現れたら、走って逃げなさい」と伝え、
「無事学校へ着くことができるよう、神のご加護を」と祈る。
「学校へ通うことができる!」瞳を輝かせながら語る10歳前後の男の子、女の子たちが描かれたドキュメンタリー作品は、淡々と彼らの通学のようすを撮影している。
ケニアの兄妹は、片道15kmを2時間で駆けて通学する。その途中いる危険な象の群れを避けながら走る。毎日往復30kmを4時間かけて走るとき、妹が足手まといではないかと見えることもあるが、兄は言う。
「通学が、一人きりじゃなくてよかった」
アンデス山脈アルゼンチンに生まれた少年は、6歳のときから馬に乗って通学している。片道18kmの途中で同じく馬に乗った少年たちと待合せ、ともに学校へ通う。馬が駆けることのできない岩だらけの道を往復3時間、毎日通う。
3000m級の山が連なるモロッコの辺境では、子供たちを学校に通わせる文化を持たなかった。今、毎週月曜日の朝片道22kmの道なき山々を歩き、少し町に出たらヒッチハイクをして学校へ向かい、全寮制の学校「アニスの万人のための教育」へ向かう12歳の少女は、家族のなかで初めて学校へ通う子供だ。
文字の読めない祖母は、「私のようになってはいけない」と、教師になりたいと望む孫娘のために機を織る。
未熟児で生まれたため両足に障害を持つ13歳の少年は、2人の弟に助けられながら、錆びた急ごしらえの車椅子で片道4kmを1時間以上かけて通学する。日常では障害のある足を母がさすり、痛みに耐えながら歩行訓練も行う。
「勉強して医者になるんだ、僕のような子供を助けてあげたいと思う」
学ぶことで未来が開けると信じている子供たちの瞳の美しさ。
「僕の家は貧乏だけど、両親は兄弟みんなを学校に通わせてくれている。金持ちだけど女の子は学校を辞めさせられた子もいるから、僕は恵まれている。勉強して医者になるんだ」と語る。
本作がフランスで劇場公開された2013年は、学校制度改革が行われていた時期だという。2008年からサルコジ政権下で学校週4日制(月・火・木・金)が実施され、休日が多いかわりに授業時間が長い。週4日半制にしようとの動きがあったが、児童の登下校に親かシッターが必ずつきそうフランスでは、送り迎えが増えるのは困るといった意見、また、勤務が半日増えるのは嫌だという教師もあり、2013年に学校週4日半制に移行できたのは全国の自治体の4分の1程度である。
日本では1992年から公立小中学校および高等学校の多くで毎月第2土曜日が休業日となり、1995年からは第4土曜日も休業日となり、2002年から完全な週5日制となっている。
その後、教育再生会議が学校週5日制の見直しを提言に盛り込み、2010年東京都教育委員会では条件付きで小中学校の土曜日授業を認めたが、基本的に公立学校は学校週5日制のまま。2011年から「脱ゆとり教育」が実施され、授業時間確保のため土曜日の授業容認の動きとなっている。
私立学校については、学校教育法施行規則において休業日を学校側が決定することができるため、公立学校に合わせて週5日制にした学校もあれば、19991年以前の通り週6日制を続けている学校も少なくない。
ーーー本作を撮ったパスカル・プリッソン監督は、ケニアの先住民を12年かけて追った『マサイ』の監督。
『マサイ』から数年後、早朝のケニアで野生生物を題材にした映画のロケハンをしていたとき、3人の若いマサイ族の少年が走ってきた。聞けば2時間かけて通学する途中だという、学校に遅刻するからと長く話すことはなく走り去った。ーー世界を旅したいからと学校を中退したパスカル監督は、彼らの求学心に感動し、本作を撮らなければならないと思ったとのこと。
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