*

ひずんだ家族、私はあきらめない

公開日: : 最終更新日:2014/03/14 ガール・パワー, ブログ, メディア

ひずんだ家族、私はあきらめない 福島・楢葉

あれから家族はふつうではなくなり、私はそれに慣れてしまった。

両親の間の溝が決定的に深まったのは、震災の年の夏。暑い日だった。

4カ所目の避難先だった福島県郡山市のアパートで、泣き叫ぶ母(49)が父(51)をなじった。

「大丈夫って言ったのに、大丈夫じゃなかったじゃない」

父は言い返さなかった。

何でこんなことになったんだろう。高校1年だった矢代悠(はるか)さん(18)はトイレにこもり、声が漏れないように泣いた。

父は東京電力社員。自宅は福島第一原発の20キロ圏内、福島県楢葉町にあった。一家は原発事故で、震災の翌日から避難を迫られた。車で寝泊まりもした。

父は事故の収束作業に呼び戻された。避難先の家に戻るのは月8日程度。細い体がさらに痩せ、ほおがこけた。母は知り合いから口々に「どう責任を取るの」「被害者面して」と言われ、携帯電話の電話帳から約30人の名前を消した。

福島県いわき市に避難した祖母までが「おめえの旦那が東電のせいで、どれだけ世間体を悪くしてるか」と言った。母は泣いた。若いころ、東電の子会社に勤め、「安定している東電の人と結婚しなさい」という祖母の言葉通りの選択をしたのに。

両親は会話を交わさなくなった。父からメールを受け取り、内容を母に伝える役割を悠さんが担った。

テレビニュースが「脱原発デモ」を映し出す。

東京の電気をつくる原発がどこにあるかも知らなかったくせに。お父さんが頑張っていることは、誰も知ろうとしないのに。無責任じゃない?

悠さんは父が責められているように感じて、腹が立った。でも、「父のことを話せば、軽蔑した目で見られるかも」と心配する自分もいた。高校でも父のことを深くは話せなかった。

高2の夏。被災地の高校生300人を招くNPOや企業の企画で、米国に短期留学した。他の高校生や米国の学生とディスカッションを重ねるうち、度胸がついてくるのがわかった。

帰国後、被災地の高校生が東北の課題を話し合う東京の集まりにも参加した。母を津波で失った宮城県の高校生の体験を聞き、決心した。「自分も言わなきゃ」。緊張で体が震えたけれど、みな泣きながら聞いてくれた。

被災したからこそ得た機会が自分を強くしていた。

「震災で減った観光客を呼び戻そう」。留学仲間の高校生が企画したいわき市を案内するバスツアーにも、スタッフとして加わった。悠さんは高2の春からいわき市に移り住んでいた。

旅行会社の協力で昨年5月に始まったツアーは、第3弾まで実現した。悠さんは首都圏からの客に父が東電社員として収束作業に当たっていることを話した。そして、「私たちが楢葉町に住んでいたことを忘れないでください」と伝えた。

抱きしめてくれる人、「お父さんたちは英雄だ」と言ってくれる人がいた。震災後はめったに笑わず、口数も減った父。その父が口に出せないことを、代わりに少しだけ言えた気がした。

母は今も祖母を許すことができない。「心穏やかになる日はない。私に実家はない」と言う。父は福島第一原発4号機の核燃料取り出しに当たり、週末だけ帰宅する生活が続く。父母がそろっても、視線が交わることはない。

悠さんは今月1日、高校を卒業した。4月から県内の大学で建築を学ぶ。「昔のように、家族でリビングに集まって仲良く話したい。でもどうすればいいのか、わからない」

ただ、一つ考えていることがある。

おばあちゃんに会いに行って話を聴こう。なぜお母さんにあんなことを言ったか、どんな気持ちなのか。家族の関係が変わるきっかけになるかもしれないから。今の私なら、向き合える自信がある。

(根岸拓朗)朝日新聞2014.3.8
(画像は卒業証書を受け取る矢代悠さん。福島県いわき市/撮影:小川智)

関連記事

講演「幸せを感じる力」

2月26日(日)名古屋で講演を行います。   依存症や行きづらさを抱える女性

記事を読む

「大人の恋」の難しさ:渡辺謙氏

渡辺謙氏の、いわゆる不倫報道からつれづれに書いてみました。 一部では、「ベッキーのゲス不倫では

記事を読む

「僕の劇団」千秋楽

千秋楽! 大きなトラブルなく怪我なく天変地異もなく、無事終えることができました。皆様のおかげです。

記事を読む

テレビ朝日「ワイドスクランブル」

高橋ジョージさんと三船美佳さんの離婚訴訟(美佳さんが提訴)、週刊誌等で高橋氏が「モラハラ夫」とされて

記事を読む

「産経抄」にご紹介くださいました光栄に感謝いたします

本日の産経新聞「産経抄」に、池内ひろ美が毎日新聞に書いた記事の引用がされ評されていますよ、と親切な友

記事を読む

坂東玉三郎の可憐さ

七月大歌舞伎観劇。 想像を絶する美しさ。『天守物語』泉鏡花の世界を、舞台のしつらえは古典的

記事を読む

婚活講演:男性の恋愛と結婚

「恋愛と結婚」をテーマに講演を行うときは女性が対象の場合が多いのですが、今回は男性のみ対象として

記事を読む

ハギュットフェス×Girl Power

ハギュット×Girl Power大阪特別記念講演 小崎恭弘講演会 『私らしい子育てを考えよう』

記事を読む

女性活躍シンポジウム:岡山市主催

新しく、まだ木の香の残る「おかやま未来ホール」に400名様がご参集くださいまして開かれました、「女性

記事を読む

謹賀新年

新年おめでとうございます。 皆さまのご多幸とご無事をお祈りいたします。 娘が着ている振袖と帯

記事を読む

新年おめでとうございます

旧年中は大変お世話になりありがとうございました。 本年もよろしくお願

Girl Power Charity Party 2019 Report

年一度のGirl Power Charity Partyを終え、ほっと

ホンマでっか!? TV「ダメ男の見分け方」

10月16日(水)21:00『ホンマでっか!? TV』フジテレビ 出

「城島茂」が24歳年下タレントと結婚・・・二回り年下

年の差が大きいと問題が起こる場合もありますが、城島さんの年の差婚は、け

前田敦子「夫と手が繋げない」:FRIDAY digital

新米パパ・ママへのアドバイス。をしたことになるのかしら。 前田敦

→もっと見る

PAGE TOP ↑