「なぜ東京家族ラボを作ったんですか」と問われることがあります。 マスコミから問われたり、ご相談来所したクライアントから問われることもありますので、ちょっと考えてみました。 今まで「作った」との意識を持っていませんでした。もちろん、法人化しており組織であるからには作ったのといえます。しかし、計画的な起業ではなく、自分一人ではできないことを行いたいと思い、皆さんの協力を仰いだ結果「できつつある」という表現が正しいと感じています。 それまで存在していなかったものが「できつつある」のは楽しみなことです。 そう。まだまだ過渡期ですね。 もちろん、東京家族ラボは私一人で行っているのではありません。多くの専門家のご尽力があります。それは、心理カウンセラーだったり弁護士だったり。そして何より、必要としてくださる方々の存在があります。 相談来所した方から、「離婚が成立したら、私も池内さんのように会社を作って相談を生業としていきたい」と言われても即賛成できかねます。それは、経営として成立たせることの困難と、相談業務を仕事とすることの精神的肉体的負担の大きさを知っているからでもあります。 しかし、「東京家族ラボ」というシステムは、長い目で見れば、日本における民間の個人カウンセリングあるいは男女問わずライフプラン・コンサルティングにとっての、ある種のモデルと成りうるものです。それは、治療・投薬といった医療行為ではなく、また、法律行為でもありません。家族や夫婦の問題解決には、社会・文化的な側面が大きくあるものです。 現在、(行政や企業や病院等のバックボーンを持たない)個人で行う心理カウンセラーが開設するカウンセリングルームは、経営難で閉鎖せざるをえない状況のところが少なくありません。個人でカウンセリングルームを運営することができず、ラボに雇用契約を求めるカウンセラーもいらっしゃいます。 カウンセリングルームを閉鎖するということは、せっかく勉強しスキルを持っている人が、活動の場を失い、悩みや混乱を抱えているクライアントが行き場を失うことでもあります。行き場を失うということは、個人と社会との関わり、個人が形成する家族という文化、その中で育つ子どもの将来を考えることなどの機会損失でもあります。 今後さらに必要となるだろう(医療行為とは異なる)カウンセリングあるいはコンサルティングを日本に根づかせるためにはどうすればいいのでしょう。これも、ずっと長く考え続けていることです。相談に来所し、話すことができるだけでも混乱の一端を解きほぐすことができます。そのためには「相談先」が必要です。 相談先とは、過去の日本に存在していた「地域の長老」や「機能していた時代の仲人」的な面をカバーできるものでもありますが、その運営は、日本では「寄付」という概念が薄く、また税制の問題もあるため、寄付やNPOといった方向では難しいだろうとの思いもあります。 東京家族ラボの運営が今後どのようになるか、そのシステムを模索中でもあります。東京家族ラボのようなスタイルは日本ではじめてであり、試行錯誤の繰り返しです。だからこそ、きれいごとではなく、私利私欲なくできるものでもあります。その役割をいただいていることを心から有難く思っています。 システムを構築してきた中で、私自身の結婚と離婚、子育てのプロセスをひとつのテストケースとして捕らえてきた面もあります。 クライアント個人の問題は一切テストケースとして受け止めたりはしていません。「僕のケースはどうでしょう」と問われたら、「あなた自身の人生をケースなどと呼ぶものではない。そんな言葉は学者が論文で使えばいいことだ」とお伝えしています。 将来、東京家族ラボのようなスタイルでの運営が他所で可能となり、または、私ではない誰かが誠実にそれを行ってくれるのであれば、他社であっても喜んで道を譲りますし、私はその役割を終えます。ご協力いただいた方々にはそのときこそ残りの人生を賭けて恩返しできるものです。 それまでにあと10年くらいかな、と漠然と思うこともありますが、今までも何社(何人)かのトラブルを聞いています。なかには、クライアントから訴えられたり、養成講座を開いてトラブルとなったり、顧問弁護士が懲戒請求を受けた事業者もあり、怒りと悲しみを感じています。 東京家族ラボは、クライアントから提訴も告訴も受けることなく続けてきております。私は当方のクライアントも協力者も尊敬し、誠実に継続しています。 過去、日本に存在していなかった、離婚や夫婦・家族問題に関わる、学術や研究のためではなく個人に添うという「役割」を作って、役割の「方向」を考えながら進んでいる中、もちろん、私自身がさまざまに悩むこともあります。(個人的な悩みは持たないことにしているので存在していませんが、法人あるいは組織としての悩みは絶えず継続しています) 「間違ってはいないか」「人さまに迷惑をかけてはいないか」「より良い方策はないか」。たえず振り返りを行いながら、前を向いて東京家族ラボは進んで行きます。私個人とは異なったかたちで東京家族ラボは成長していくのだと思います。